─ 中小ダイカストメーカーはどうすればいいのか ─
読者の方からメッセージをいただいたことをきっかけに、
中小ダイカストメーカーは今後どうすべきかと言うことを考えているとき、
先週の中日新聞一面コラム「中日春秋」の内容を思い出した。
それは、
【一九九八年八月、米国の格付け会社が、トヨタ自動車の社債を、
最上位から一つ格下げしたことがあった
理由は、同社が表明していた「終身雇用制の維持」。
ロナルド・ドーア氏の新聞コラムでの表現を借りれば、
要は、「人員整理の決意が足りない」と格付け会社がみなしたということ。
それがいけないと断じたわけである
時は降(くだ)って二〇一二年。つい一昨日のことだが、
日本の格付け会社がトヨタの格付けを、やはり最高位から一つ下げた。
今度の理由は「円高への対策が不十分」。
つまり国内生産の比率が高いのがいけない、というのである
いかにも、トヨタは他の自動車メーカーに比べて海外生産比率が低い。
あまつさえ、雇用を守るためとして「国内生産三百万台の維持」を掲げてもいる。
この円高時代に、不利を承知で国内で踏ん張ってくれている印象がある
昨年暮れ、豊田章男社長を今年注目の「世界の経営者十二人」に選んだ
米紙ウォールストリート・ジャーナルも、
記事の中で、そうした同社の姿勢に懐疑を示したものだ。
「日本にとって良いことは、トヨタにとって良いことか」と
だが、おかしくないか。従業員を守ろうとする姿勢が、その会社の欠点とみなされ、
雇用を何とも思わない会社だと株価や企業価値が上がるなんて。
嗚呼(ああ)、企業が「人間」ではなく「市場(マーケット)」のものになっていく…。】
というもの。
前にも中小ダイカストメーカーの新興国での事業の可能性について書いたが、
その中には上記コラムのような矛盾、ジレンマが含まれている。
「つくったところで売る」「売れるところでつくる」「安くつくれるところでつくる」
いずれにしても日本以外でつくることが増えていくのだろう。
「企業はそこで働く人のためにある」が企業の第一の存在価値だと思う。
単に海外に進出するだけでは「働いている日本人のため」にはならない。
そこには純粋な理念や固い信念、高い目標や崇高な思考があればよいのか・・・
それで成功するのか・・・
そんなことは考えず商機があるか勝算があるかで判断か・・・
それだけでいいのか・・・
将来を見越した戦略があればよいか・・・
しかしだれも将来のことは分からない・・・
新興国への進出の可能性を言いながら相反する価値を言ったりと、
矛盾、ジレンマが同居している。
実際の現場は「奇麗事」ではすまされない
難しい・・・・・・
現実的には、その企業がおかれた環境、状況、
経営者の心情、思想、性格で自ずと結論が導き出されるのであろうが、
その経営者も矛盾、ジレンマと同居することになるのだろう。