オペレーターの質と量について、
教育訓練する環境が整っていれば、質については一定の範囲で向上させうるし、
量的にも現場に供給可能となる。
このローカルダイカストメーカーは日本のメーカーと比較して、
教育訓練について恵まれている部分がある。
一例として、未経験者へのOJTについて見てみる。

教育の手順はあくまで私の経験則であるが、
未経験者が入社し一定の教育期間を終えると現場に入る。
現場で最初の作業はバリ取&仕上げ作業。それに慣れたら外観検査などの品質チェック。
そこで製品の優劣や良否の判断を身につけ、本丸の成型工程に入る。
ここで日本は自動化が進んでいる為に、まずメインのマシンの操作を習得し、
その次に自動化設備、その他周辺設備の操作を習得させる。

そしてよい製品を安く、安定的に生産するために、”どう仕事をしているか”を覚え、
経験を積ませ、更に低コストで高品質な製品を生産できるよう改善手法を学び自立。

ここで”どう仕事をしているか”を教える時に自動化が邪魔をしていることがある。
ダイカストにおいて、
例えば、離型剤をどこへ、どのくらい、どのように塗布するのかが、
一定の品質の製品を安く、安定的に生産する為の一つの要因になる。
私たちがダイカストを始めた頃は、当然全ての機械でハンドスプレーを使って塗布していて、
機械によっては手勺で溶融アルミを注湯して、足踏みスイッチで射出を起動させ成型し、
製品も手動で取り出すサイクルで生産していた。
そのため離型剤の塗布の仕方しだいで品質良否、生産の増減が変わってくることを、
作業を通して学び、身につけ、そのことが今でも基礎となり役立っている。

現在の日本でのダイカストでは、ハンドスプレーを使って生産することはまれなので、
この過程を経験することが困難になっている。
ロボットや自動装置を使用て塗布する場合でも、同類の経験はできるが、
毎ショット、ハンドスプレーで塗布し、ショットごとに出来映えを確認して、
次の塗布に対しフィードバックするほどの経験を積むには、
相当の時間を必要とするだけでなく、身につけるためには相当の努力も必要になる。
それがこのローカルメーカーでは、特に中型機において、まだまだハンドスプレーが主流であり、
オペレーターはその経験をし、それなりに理解して作業をしている。
離型剤の塗布に限らず、溶湯の注湯のタイミングにしろ、取り出すときの硬軟の感覚や、
堰折り時のトラブルなど、手動だからこそ経験できる項目について、
教育訓練用の機械を持っている大企業や一部のメーカーを除いて、
日本の中小ダイカストメーカーにはできないことがインドローカルでは可能になっている。

インド人は意識していないのだが・・・。