昨年末から、数冊の技術書を読んで。

全体の印象は、「もう少し踏み込んで欲しい」と思った。

内容が悪いとか、内容に不満足と言うことではない。
非常に優秀な著者ばかりで、高度な理論、数式による諸条件の算出や、
基礎的な物理・科学の教養は、専門的な勉強を相当されていて、尊敬しきり。
そんな部分は「職人のような」私には難しく、頭を掻きむしりながら、目を走らせるだけのページも多かった。

職人のような私でも、読み直したことで、今までの経験に照らし、つなぎ合わせ、
想像力を発揮することで、この2ヶ月でずいぶん勉強になり、
今後の活動への収穫は少なくなかったので、著者に感謝するばかりである。

その上で「もう少し踏み込んで欲しい」感は、どうしてか?
言ってしまえば、未だ「完全」には解っていない。技術が確立されていないこと。

解っていない中でも、必要と考えられて、解っている範囲で記述されているのであるが、
現場にもっと近い、よく言う「どろくさい」「業(わざ)」が入っていないことが大きいと考える。

私も仕事を始めた時に技術書のお世話になったし、今回も収穫があったので、文句を言うわけではないが、
「現場で」「現状で」「直接的に」となると、結局「経験」がないと「答え」が出ないのである。

ダイカストを含むアルミ鋳造においては、
世の中に、真の「職人」が大勢いて、過去から現在まで現場を動かしている。

現実に高品質を実現している会社なり、職人がいるので、
解らないながらも、それなりの現場で活かせる、現状に合った、経験に基づいた答えをもっている。

将来の為にも、後進育成のためにも、「職人」が持っている知恵を結集することに意義があると思う。
寄せ集めた上で、検討を加えれば、新しい技術が生まれる可能性が高い。

口で言うのは簡単で、現実にはできない、やらない訳がある。

ダイカストメーカーそれぞれが、固有の技術と思い、その固有の技術の流出を避け、
「職人」も、長年の苦労の末に得た経験による「答え」を、簡単に手放すわけもなく、
そう言う私も、その経験で得たもので、報酬をいただき、家族との生活を成り立たせているわけで、
その「固有の技術」なり「答え」のすべてを、体系づけて、世の中に出してしまうと、
自らの生活が成り立たないのではと、考えているから世の中に出さない。

もう一つは、世の中に出して通用するか?言い切れるか?そこまでのものか?
という心境から出せない。

自分自身が現場で不良対策などをやることにおいては、時間がかかろうが、失敗しようが、
やり通せば、自己責任で完結できるが、技術書となると、『耐えうるか?』となるのだろう。

鋳造メーカーにいた時にも感じてはいたが、以後、色々な方たちとお会いして、
様々な意見を聞いていいるうちに、会社や人によって、考え方がずいぶん異なることが分かったからこそ、
「職人」の「経験」の「総棚卸」と「交流」がなされれば、
必ず新しい技術が生まれる糸口はつかめると感じている。

と言ってはみるものの、私は自分の生活が成り立つかを考えてしまう「凡夫」である。
今のところは、仕事を通して更に経験を積み、想像力を働かせ「答え」を沢山見つけることに専念しよう!

「何が言いたかったんだ」とお叱りをうけそうな気が・・・・。

誤解があるといけないので、あえて記述させててもらう。
私には、出版されているような技術書は書けないし、有意義で必要なものであることは間違いなし、
勉強させていただいていることは事実であり、著者にはお会いしたことはないが大変感謝している。